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妊婦さんへの薬「禁忌」一部解禁へ

2025.12.25 保育お役立ちコラム
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マタニティ・白バック

妊娠中の使用が母体や胎児に悪影響を及ぼす可能性があることから、妊婦には使用が推奨されない薬剤が多数存在します。
そうした薬のひとつである制吐剤「ドンペリドン」については、今年5月に妊婦への使用制限が解除されました。
妊婦の意見を取り入れつつ、最新の科学的根拠にもとづき、薬を安全に使用するための対策が進められています。
(※2025年8月24日 朝日新聞の記事を参考に要約しています。)

ドンペリドンの扱いが変更。妊婦と薬の安全性を見直す動き

2005年に設立された国立成育医療研究センター内の「妊娠と薬情報センター」では、妊娠中の薬に関する相談に対応しており、これまでに約24,000件の相談が寄せられています。
2005年から2022年までの間に寄せられた相談の中で、妊婦への使用が禁じられていた薬の中で最も相談件数が多かったのは、ドンペリドンで483件でした。
ドンペリドンは、慢性胃炎による吐き気や胃の不快感などに対して広く用いられる薬です。
しかし、過去の動物実験で高用量を投与した際に胎児への影響が確認されたことから、長年にわたって妊婦への使用は避けるべきとされてきました。
同センターの後藤美賀子さんによりますと、妊娠初期のつわりの症状は、ドンペリドンが適応される消化器系の不調と似ているため、「胃の不調」として医療機関を受診した女性がドンペリドンを処方され、後に妊娠していたことに気づくケースが少なくなかったそうです。
そのような状況から、薬の影響を不安に感じたり、場合によっては妊娠の継続を悩んだりする女性もいるといいます。
薬の禁忌情報は「添付文書」と呼ばれる医薬品の使用説明書に記載されていますが、その内容が必ずしも最新の科学的知見を反映しているとは限りません。
このような背景を受け、厚生労働省は2016年度から妊婦や授乳中の方に向けた添付文書の見直しを進めています。
同センターでは、これまでの相談内容や国内外の研究資料をもとに、妊娠中に薬が胎児に与える可能性のある影響を評価しています。
ドンペリドンについては、複数の研究結果により、妊娠初期に使用しても先天性異常のリスクが高くなる可能性は低いと判断されました。
この結果を受け、厚労省の審議会は今年4月に妊婦への禁忌を解除することを了承し、製薬会社は5月に添付文書から妊婦の禁忌項目を削除しました。
この改訂により、薬を服用した後に妊娠が判明した女性も、不安を感じることなく妊娠を継続しやすくなりました。
ただし、あくまでつわり治療薬として正式に認められたわけではなく、安易な使用は避けるべきとされています。

より安全な治療環境を目指して妊婦への薬の見直しが進む

妊娠中であっても安全に使用できると確認された薬が、近年増えてきています。
国立成育医療研究センターの調査結果をもとに、これまで禁忌とされていた免疫抑制剤、カルシウム拮抗薬、β遮断薬など合計7種類の薬剤について、その制限が解除されました。
これらの薬は、関節リウマチや高血圧といった慢性的な病気の治療に使われており、これまで禁忌のために妊娠や出産を断念した方や、薬の中止により病状が悪化したケースも報告されています。
また、日本国内では、海外に比べて妊婦への禁忌指定が多いとの指摘もあります。
中には、添付文書では禁忌とされているものの、医師向けの診療ガイドラインでは最新の研究に基づき「使用可」とされている薬も存在し、実際の診療と書類上の規定との間に矛盾が生じている状況です。
そのため、医師の指示のもとで処方された薬について、患者が添付文書に「妊婦への使用禁止」と記載されているのを目にして不安を抱くことや、医師と薬剤師の説明に食い違いが生じて混乱する例もあるといいます。
センターの後藤美賀子さんは、「妊婦に薬を使うかどうかの判断には、リスクと利益の両面から十分な情報が必要です。
妊娠中でも必要な治療を安心して受けられるよう、添付文書や診療ガイドラインに最新の安全性データを反映していくことが求められます」と語っています。

妊娠・授乳期の薬の不安は専門窓口へ相談を

妊娠中、あるいは妊娠を希望している方が薬の使用について迷った場合には、国立成育医療研究センターが運営する「妊娠と薬情報センター」のウェブサイトから、専門家による相談を申し込むことができます。
このセンターに加えて、全国47都道府県には合計62の連携医療機関が設けられており、対面でのカウンセリングを受けることも可能です。
相談には料金が発生しますが、一部の地域では費用を補助している自治体もあります。
また、授乳中の薬の使用について悩む方も少なくありません。
授乳中に服用した薬は母乳に移行しますが、それを通じて乳児の体内に取り込まれる量は非常に微量であることが多いとされています。
センターによる調査によれば、添付文書では「授乳を控えるべき」と記されていても、実際には母乳中に含まれる量がごく少なく、安全性が確認されている薬もあるとのことです。
薬のために授乳を中断すると、母乳の分泌が止まったり、乳房の張りや痛みといった問題が起こるリスクもあります。
センターの公式サイトでは、授乳中に使用可能な薬と避けたほうがよい薬の一覧を公開しています。
また、電話やオンラインによる有料相談にも対応していますので、不安がある方は一度専門家に相談することをおすすめします。

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