保育士低賃金問題解決?!給与の見える化|保育システムNavi

保育士低賃金問題解決?!給与の見える化

2021.3.26 保育お役立ちコラム
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コロナ禍と慢性的な保育士不足によって本来であれば働きに見合った給与が払われるべき保育士。
しかし、公費でいくら人件費が出ているのかハッキリしていませんでした。
内閣府は2021年度分から初の通知改定へのりだし、人件費額を示す予定とのこと。
保育士低賃金問題解決に向けての足がかりになることが期待されています。

保育士処遇改善

国をあげて2013年度から行われている保育士の処遇改善。
2020年度までに保育士1人当たり月額で約4万5000円もの賃金アップが進みました。
また、保育士の経験値によって最大で1人当たり月4万円も上乗せされる処遇改善加算も設けられましたが、保育士の低賃金問題が解決したわけではありません。

認可保育園には、税金と保護者が支払う保育料が原資となる運営費の「委託費」が給付されています。
「公定価格」で計算されるこの「委託費」は、毎年度「私立保育所の運営に要する費用について」という通知により、所長(園長)、主任保育士、保育士、調理員等の「人件費」の額が提示されてきました。
この人件費は賞与や地域手当などを含む金額で、法定福利費、処遇改善等加算は含みません。
2020年度の保育士の年間賃金は全国平均で約394万円。地域区分で異なるはずの人件費の内訳は公表されていないのです。

地域ごとに人件費を見える化

地域区分の人件費額と実際に支払われている金額を比較しなければ事業者が適正に賃金を支払っているか、公にはっきりとはわかりません。
そこでそれを明確にするために内閣府は2021年度からの通知は地域区分ごとの人件費額を掲載することを前提で準備を進めているのです。
「委託費」の通知改定によることで、保育士をはじめとする保育施設の関係者一人あたりの人件費を具体的にイメージしやすくなります。
現場の保育士が待遇に疑問をもった場合、施設長や運営事業者に説明を求めやすくなるでしょう。
委託費はほぼ税金なので、情報開示や説明責任も促されるようになり、より透明性のある保育施設の経営への改善が期待できます。

公定価格の人件費(委託費)がもっとも高いのは東京23区。
2020年度の公定価格は約443万円です。そこに国の処遇改善加算Ⅰが月1万8000円。
東京都独自の「東京都保育士等キャリアアップ補助金」(月額で平均4万4000円)。
年間賃金が約517万円になることになります。
さらに国のキャリアに応じた処遇改善Ⅱが月5000円支給された場合、約523万円です。

では実際に保育士が手に取った年間賃金はどうだったのでしょうか。
内閣府の調査によると東京23区の常勤保育従事者の実際の手取り年間賃金は約381万円。
処遇改善Ⅱが支給されない場合でも約517万円と比べると約136万円もの差があります。

原因と見える化による改善への期待

賃金が低くなる理由として大きいのは、若い保育士が多く、キャリアに応じて支給される処遇改善Ⅱの対象にならないこと。
人員体制い厚みがあることがあげられます。
保育士への負担軽減のため、配置基準を上回る人員体制を組んでいるため一人ひとりの賃金がやすくなるのです。

コロナ禍にあって事業者に性善説がまかり通らないことが露呈したことも要因のひとつ。
制度の網の目をかいくぐって経営陣に私的流用される問題が発覚したのです。

臨時休園になったとしても国は委託費を満額支給しました。
それは休業中の補償をすることで保育士の離職を防止する意図があったのです。
しかし国の通達に従わない事業者は賃金カットをし始め、それが全国各地で横行。

こうした不正防止にも賃金の見える化は監視の目となるでしょう。
保育士の賃金アップ・待遇改善は保育の質の向上にもつながります。
正しく税金が使われるようになれば、保育士にとってはもちろん、保護者や自治体に取ってもプラスです。

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